待機児童問題の緊急対策案に大きな疑問/高橋コラム

2016/03/30

待機児童問題について、政府がこの度発表した、緊急対策案はほぼ的外れです。あくまで「緊急対策」なので、完璧を求めることはできないかもしれませんが、それにしても小手先だけの施策のように思います。

今回の緊急対策の一部ですが、
・保育コンシェルジュの配置
・企業主導型保育事業の積極的展開
・改修費支援の拡充
・小規模認可保育所の定員数の上限を19人から22人に
などがありますが、待機児童問題の根本はそういうことではありません。

育児助成金白書を更新してくれるママに元保育士さんがいらっしゃるので、現役保育士・OB保育士計5名で座談会を開きました。その中で、OB保育士さんに辞めた理由を聞いたところ、皆口にしたのが給与の低さでした。

「給与は月16万円。毎朝5時に起きて、帰りは21時。ひとり暮らしでギリギリの生活でした。他の仕事に就いて、こんなにも楽に給料が稼げるのかと驚きました。」

「園に行って、午前は園児と散歩。寝かしつけて、保育日誌。見送ってイベントの準備。家に帰って折り紙したり、画用紙で色々作ったり。副業もできなかった。」

私は待機児童問題の根本は、保育士の収入不足と社会的地位の低さにあると考えます。今まで、保育士は人気の職業でした。ただ、いざ保育士になってみると非常に過酷な職業。言葉の通じない、次に何をするか分からない子供達を何人も見るのですから、安易に想像できるでしょう。そのうえ、給与も低いのです。

保育士は、国の宝である子供達を育てる、とても大切な職業です。国は保育士の母性にかまけて、今まで蔑(ないがし)ろにしてきたとしか言いようがありません。(男性の保育士もいますが・・)

ただ、その理由は若者世代にもあります。少し脱線しますが、若者は選挙の際、票を投じません。なので、党は選挙対策として、介護などの補助金政策を積極的に行ってきました。票になりますからね。この間も3万円ばら撒きがニュースになっていましたが、そういうことです。育児世代が、しっかり選挙に行くことはとても大切な事なのです。

話を戻しますと、あるお母さんの匿名ブログ「保育園落ちた。日本死ね!」から始まり、夏の参院選も控えている事から、この機会にぜひ政府には、保育士の収入を月25万円以上にしていただきたい。保育園への補助ではなく、直接保育士に!有能な人物が保育士にならない国になってしまっては、先はありません。ぜひ、問題を根本から解決する対策をお願いしたいものです。

最後にこの問題もそうですが、子供を産めと言いながら年間700人を超える児童が虐待で命を落としている恐れがあるというデータもあります。多様化する問題は厚生労働省だけではすでに対処するのは無理があります。育児に特化した、関係省庁を設立すべきではないでしょうか。


[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也