待機児童問題の原因は?保育所不足?/高橋コラム

2016/03/18

一人の女性の匿名ブログが待機児童問題を露わにし社会問題にまで発展しています。国政にも影響が出始め、国会内でも野党からの意見が多くあり連日報道されています。

関西で住みたい街としての人気エリアである大阪府吹田市と豊中市は再開発などに伴い、大規模マンションが続々と建設されました。多くの子育て世帯の流入に成功したものの新しい問題に直面しています。新婚世帯や小さい子どもを持つ世帯が急激に増加したことで、保育所不足となり待機児童数の急増が懸念されます。吹田市では認可保育所や認定こども園など認可の保育施設への4月からの入所申込が2481人と過去最多となり、1次選考では4割近くにあたる1018人が定員オーバーとなりました。選考結果発表後、市役所は赤ちゃん連れの母親や父親、祖父母であふれかえる事態となったそうです。

大規模マンションの建設ラッシュが続き、多くの世帯流入が分かり切った中でなぜ対応策を取れなかったのでしょうか?保育所新設などで昨年よりも大幅に定員は増やしたものの、保育所をつくるための土地の確保が難しく整備が追いついていないようです。新築で大規模マンションを建てる段階で、補助金などを交付しマンション内に保育施設を設けることは不可能だったのでしょうか?

全国的な保育所不足が問題になっていますが大きな原因の一つとして、用地確保があります。新築で保育所を建築する際には周辺住民の反対運動が起こるなど運営面での理解がもとめられ、マンションやビルに小規模保育施設を設ける場合、一定規模を超えると建物全体の防災設備などの設置が義務づけられています。そのため土地や建物を賃借する際にオーナーへのメリットが現状としてほとんどありません。認可保育施設などは長期の賃借契約をするケースが多いのですが、こういった理由で募集していないことが多いようです。固定資産税の減免や防音対策・設備設置への補助などオーナーサイドへのメリット拡充を実施することで用地問題は少しは解消されるのではないでしょうか。

育児助成金白書でも取り上げています東京都荒川区の「区立公園内保育所整備」は用地不足問題に対しての一つの答えかと思います。都市計画法により、全国のどこの地域でも、ある一定以上の割合の公園や緑地を設けることが定められており、再開発をする際にも検討されています。公園内に保育所を設置するというこの取り組みは騒音問題や運動場などの面積確保を容易に解決できる画期的なアイデアです。

東京都に続き、大阪府豊中市でも国家戦略特区を利用し、市が管理する公園の一部に保育所を設けるようで、関西では初めての事例となります。同市で保育所を設けるのは羽鷹池公園とふれあい緑地の2か所で、それぞれ360㎡と500㎡を想定しています。都市公園法により公園内に保育所を整備することは認められていないが、特区により規制が緩和されます。

保育施設を設置するには様々な関連法規をクリアしていく必要がありますが、それらをふまえた上で法改正や緩和が急がれます。



[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也