#保育士笑って
皆さんは保育士という職業に対してどんなイメージを持っていますか?
子どもの情操教育で親と同様、重要な役割を担ってくれている保育士。でもそんな保育士が今、大ピンチなんです!
イクハク(育児助成金白書)をスタートして、多くの保育士さんとお話をする機会がありましたが、
「もう(保育士を)辞めるしかありません」という話の数々。ほとんどの園の保育士さんがいっぱいいっぱいの状態。
これがよく耳にする【保育士不足】という問題に繋がっています。
この「#保育士笑って」の特集企画は、まずは保育士さんの厳しい状況を知ってもらい、
子どもたちが健やかに育まれる保育園の重要性を再認識してもらいたいと作成しました。
子どもと多くの時期を共にする保育士さんの「笑顔」は親の笑顔同様、幼児教育で最も大切な1つです。
少し長いのですが、ぜひ読んでみてください。
また、現役保育士・保育士経験者の方、保護者の方で、ご自身のご意見やエピソードがあればSNSで投稿してみませんか。
投稿方法は、このページの最後に記載しています。
Written by 浜辺拡臣
(一社)日本子育て制度機構イクハク創設者。
また、大阪府児童虐待死防止プロジェクト「ゼロ会議」(2019~21)の発起人。
今、保育士が足りない
保育士不足という言葉をよく耳にします。でもこれは他の職業の人手不足とは少し違います。保育士という職業は小学生から高校生までの女子のなりたい職業ランキングでは、ずっとトップ5に入る程の人気の職業です。もちろん現在も。それなのに、保育士が不足するとはどういうことなのでしょう?
保育士が足りないということは、保育士になる人数より、辞めていく人数が多いということ。保育士になるにはだれでも直ぐに出来るわけではありません。指定保育士養成施設と言われる大学や短大・専門学校を卒業するかまたは、それ以外の大学や短大・専門学校を出た場合でも保育士試験を合格する必要があります。高卒の場合も実務経験2年を経て保育士試験を受け合格しないと保育士にはなれません。多くの時間をかけて希望を胸に保育士になったのにどんどん辞めていく現状。2023年現在、保育士の資格を持ちながら保育士でない人(潜在保育士)の人数は100万人と言われています。なぜそのような状況になっているのか。 実際に辞めた方のお話を交えてまとめてみました。
保育士の仕事量
無視され続ける「配置基準」
配置基準とは、1人の保育士が何名の子どもを担当するかと定められているものです。なんと4歳児以上では子ども30人迄を1人で担当するということになっています。いや完全に無理!先進国で比べてみても負担が大きいのが分かります。さすがにこれは問題だということで、2016年に規制緩和が設けられ皆が期待しましたがここに書く程でもない微々たる緩和でした。地方自治体ではこれはさすがに厳しいと独自に財源を捻出して、独自の配置基準を設けている地域もありますが、フランスの15人の基準にも遠く及ばない現状です。
ちなみにこの配置基準は1948年(昭和23年)から、現在まで残念ながら変わっていません。
集団保育から個別保育へ
近年、保育の方向性が大きく変わりました。クラスの園児皆に同じことをさせる保育から、個性を伸ばす保育へ。それにより1人の子どもに対しての業務が増え続けています。以前は、クラスの年次計画・月次計画・週次計画・日次計画を立てて報告書を作成していたものが、今は1人1人の子どもに対してそれらを作成し、報告することになっているそうです。また環境的にも保育士さん一人一人にパソコンがある保育園も少なく、手書きでその作業を行っている園がほとんどです。
催し物が多い園は良い園という慣習
入園式に卒園式、運動会におゆうぎ会遠足などの定例の行事から、もちつき、節分、ひな祭りなどの季節の行事。PTAやバザーなとその他の行事も含めて、保育園は何かと慌ただしい。一昔前迄は、行事が多い園=良い園とされてきました。今は見直されつつありますが、まだまだ保護者や園長・理事長からの要望などで行事の多さに苦しむ保育士さんが多くいます。もちろん昼間に作業できないので、家に持ち帰り夜遅くまで作業することが日常化している話も多く聞かれます。ある保育士さんの一日のタイムスケジュールを紹介します。
保育士が足りず休めない
保育士はとにかく休めないそうです。下のコメントを頂いたとき、胸が締め付けられる思いでした。
保育士の給料が安すぎる
保育士の給与明細
これだけの労働をしている保育士さんがどのくらい収入を得ているのか気になりますよね。週に5日フルタイムで働く現役の保育士さんから給与明細をお借りしました。
なんと手取りが14万円。もちろん地域や園によって変動はありますが、政府は平均月26万8000円と報じていますが、大体月に15万円位が保育士さんの手取り給与の平均ではないでしょうか。月に21日出勤してこの金額は本当に厳しい。食べるものや服も切り詰めないと生活できるレベルではありません。一人暮らしの保育士さんが、働いた後に夜のアルバイトを掛け持ちしている話も多く聞いてきたのは、この現状があるからなんですね。
保育料無償化の流れが保育士の給与に悪影響する?
最近、保育園料が無償化の流れにあります。政府や行政も少子化に歯止めをかけるべくニュースを賑わせています よね。保護者にとってはありがたいことですが、保育士にとってはどうでしょう。無償化になるということは、国か行政が補助をすることになり、その決められた給料枠が基準ではもう抜け出せません。政府や行政もその点を踏まえて無償化を進めて欲しいと願います。
保育士 その他の問題
仕事量と給与以外にも、様々な声を聞きました。多かったものを紹介します。
園長について
園長先生や理事長への不満も多くみられました。経営側との壁は発生しがちな問題ではありますが、 子どもや保育に関しては熱心でいて欲しいという気持ちにはなりますね。
親について
聞いた話のひとつで印象的だったのが、「保育士は親を親にする役目もあります」という言葉。どいうことかというと、初の寝返りをするかしないかという時期に、保育士さんが見ている昼間にゴロンしたんですって。でも敢えてお迎えに来た親には告げず、次の日の登園時に親が「昨日の晩初めて寝返りしたんです!」と喜んだ声に対し、おめでとうございます。嬉しいですね!と。でもまあこんな話ばかりではなく、、
保育士について
保育士による虐待ニュースが度々報じられますが、今の状況がその一端を担っているのかも知れません。決して虐待した保育士を肯定する訳ではありませんが、現代の保育園には厳しい環境があることは確かです。
なぜここまでほったらかしに?
3つの要因を私なりにまとめました。
政治の怠慢
2015年に保育士の配置基準の改正が閣議決定されました。2016年に緩和されたものの、2023年現在未だに実質的な施策は実施されていません。なぜ後回しになるのか?それは票にならないからだと私は思っています。配置基準を変えて欲しいと強く願うのは保育士さん。その保育士さんの票を集めたとしても微々たるものという現実が政治家の腰を重くさせているのでしょう。また、義務教育ではないこともあげられます。しかし女性の社会進出を唱うこの時代では、保育園の充実は避けて通れません。
保育士だけでなく、潜在保育士や保護者も声を上げていくか、心ある政治家の奇跡的な登場を待つしか無いのかも知れません。
保育士の声をあげるところが少ない
保育園の園長や理事長に、労働環境や人員不足を相談しても話が進まない場合は、全国福祉保育労働組合(福祉保育労)という団体があり、相談できるようになっているようです。恥ずかしながら今まで福祉保育労さんを知りませんでした。署名を集めて国会に提出などのアクションを行っておられます。
ただ、本来は保育士の声を聴いた、園長や理事長が行政や政治と掛け合うことが本筋です。本来の役割を全うしていない園長、理事長が少なくないのもこの業界の特徴と感じます。
保育士の責任感
保育士の話を聞き、一緒に園長と話しにいこう、役所と話そう、地域の政治家に相談にいこうと言うと大抵の保育士さんは尻込みされます。理由は「今の担当している子どもたちはどうなるのでしょうか?」という言葉が返ってきます。波風が立つと、配置換えや子ども、親御さん、園に迷惑が掛かるのではと心配され、結局は自分の中で押し留める選択をされます。このことも今までこの問題が大きく取り上げられなかった要因だと思います。
保育士の給与を3倍に
私たちは、他人の子どもも大切に育てたいという素晴らしい感性の上にあぐらをかき、長年人気の職業ということで、保育士を使い捨てし続けています。ついに辞める人数が多くなり保育士不足という現状になってしまいました。
このままでは、保育士になりたいという方も少なくなり、多くの園の保育の質が下がってくることでしょう。
民意(票)が得られず、また政治家も本気にならないこの問題を解決するには、敢えて言わせてください。保育士の給与を2~3倍程度まで引き上げることが一番です。保育士に余裕を持ってもらい、社会的な地位上げを実施すれば優秀な人材が保育士に集まるでしょう。本来、子どもの健やかな情操教育を担う保育士という職業にはそれだけの価値があるのです。2023年の年頭に岸田総理が異次元の少子化対策を実施すると銘打たれました。どのような内容になるかはまだ公表されていませんが、ぜひ保育士へも目を向けていただきたいと思います。いきなり給与3倍は難しくても、保育士が余裕をもてる環境を整えることは火急の課題です。
保育園の運営費はほどんどが、補助金と保護者からの保育費の2つで賄われています。繰り返しになりますが、保育費は現在無償化の流れにあるとするなら、保育園の運営費はほぼ補助金で賄われることになります。一度決まった額はなかなか変わりません。どうか「こども庁創設」や、「異次元の施策」のこの時期に配置基準の見直し、保育士の待遇、業務改善が見直されることを強く願っています。
虐待死防止の観点からも
私は大阪府で2019年~2021年の3年間、最終年の2021年に大阪府での児童虐待死をゼロにすることを目的とした、「ゼロ会議」というプロジェクトを行いました。その時に感じたことが、保育士や学童の先生は、服装のみだれや体の様子を見て保護者からの虐待を認知しているケースが多いということです。ただ、業務や時間に余裕が無いため見て見ぬ振り、親と話す時間を作ることができない現状を見てきました。
ゼロ会議では民間が親を監視・厳罰するのではなく、共感こそが虐待の防止になると訴えてきました。保育士さんに余裕を持ってもらい、気になる子どもの保護者に話しかけてもらえる日がくることを願っています。
SNSで #保育士笑って と発信してみよう
長文お付き合いいただきありがとうございました。
実は3年ほど前から本企画制作にあたりずっと悩んでいました。解決の糸口がなかなかスムーズに繋がらないのです。ほとんどの園で抱えている大きな問題とはヒヤリングで実感出来たのですが、どう声を上げるか、どこに上げるか、具体的で実現的な解決法は何かなどグルグルしていて、実は今もそうです。でもいつも心には残っていて、考えている自分がいる。そこで至ってシンプルなことに気付きました。
もしからしたら政治家も保育士も園長も含め皆同じグルグルの渦中にあって、なかなか前に進まないのではと。ということもあり、確固たる道筋を立てられないままを公開するに至りました。
なので、この特集を読んでもし何か思うことがありましたら現役保育士の皆さん、潜在保育士の皆さん、また保護者の皆さんご自身のSNSで応援メッセージや、エピソード、改善したい点、ご意見、感想など「#保育士笑って」を添えて投稿してくださればありがたいです。皆さんのつぶやきで何か一つ状況が変わればと願っています。
●現役保育士さん
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