【熊本地震】災害時のこどものアレルギー疾患対応/食物アレルギーのこども

2016/04/20

〇食物アレルギーのこどもをお世話される方々へ

食物アレルギー症状を起こさせないこと、症状が現れた時どうするかを日頃考えておくことが大事です。お世話する方々がこどもを誤食(誤って原因食物を食べてしまうこと)から守ってあげましょう。周囲の方々に理解を求めることも大切です。避難所の管理者、あるいは行政の方に相談してみましょう。

1).原因となる食物を誤って食べない/食べさせない
◆支援食はアレルギー表示を確認しましょう
支援食などの包装にある食品表示をよくみて、原因食物が入っていないか確認しましよう。“鶏卵、乳、小麦、ピーナツ、ソバ、エビ、カニ"の7品目は必ず記載されます。これ以外の食物は少量では記載されないことがあり、注意が必要です。

◆炊き出しでの注意と個別の調理
炊き出しでは、原因食物が使われていないか調理にあたっている人に確認しましょう。自分で調理できる状況にあれば、食材だけ分けてもらう方法もあります。管理者や調理担当者に相談してみましょう。

◆アレルギー支援が受けられるように相談しておきましょう
“アレルギー対応食やミルク”の支援がある場合、優先して利用できるよう、避難所の管理者や行政の方々に早めに相談しておきましょう。

◆子どもが周囲の人から食べ物をもらうことがあるので、注意しましょう
食物アレルギーサインプレートなどを利用して、周囲の人に食物アレルギーがあることを分かりやすく伝える工夫も有効です。

2).症状が現れた時どうするかを、日頃から考えておくことが大事です

症状の強さに併せて適切で迅速な対応をしましょう。

[軽い症状]
ロや目の周りなどのじんましん、かゆみ、ロやのどの違和感、ロ唇やまぶたの腫れ、吐き気、軽い腹痛、鼻水、軽い唆など
対応:慌てる必要はありませんが、大人が必ずそばにいて、しばらく様子を観察して症状の進行に注意してください。抗ヒスタミン薬があれば飲ませて下さい。

[やや強い症状]
全身のじんましん、強いかゆみ、強い顔のむくみ、複数回の喧吐、強い唆など
対応:様子を見ず、医療機関へ向かってください。

[強い症状]
のどや胸がつかえる、声がかすれる、強い腹痛、なんども吐く、ゼーゼー、ヒューヒュー、苦しさ、顔色が悪くなる、ぐったり、意識消失など
対応:ショックやショックに近い状態です。至急、医療機関を受診してください(可能なら救急車で)。本人用エピペンがあれば速やかに注射してください。

※誤食事故は予測できません。避難所生活は普段よりも危険が多いので、万がーの時はどういう行動をとれば良いのかあらかじめ考えておきましょう。


〇食物アレルギーのこどもたちへの配慮のお願い(周囲の方々へ)

食物アレルギーはアレルギーの病気のひとつで、原因となる食物を食べると様々な症状(じんましんやかゆみ、唆、ゼーゼー、息苦しさ、喧吐など)をおこします。このため、貴重な支援食であっても、食べられないどころか、“食べてはいけないもの”となり、家族の方々は食事のたびに大変気を使っています。ー緒に過ごされている皆様には、食物アレルギーについて以下のことをご理解のうえ、ご配慮ご協力ください。

1).支援食・炊き出しで食べられるものと食べられないものがあります
配給や炊き出しの時は「食物アレルギーの人はいませんか?」と一声かけてください。

◆「食物アレルギーの人はいませんか?食べられるもの教えてください」
食物アレルギーの原因はそれぞれのこどもによって異なります。それら原因食物を毎日の食事から除く必要があり、支援食、炊き出しなどで配慮が必要です。家族や患者さんはこの非常時に食物アレルギーがあることを言い出しにくいこともあるので、周りの方々は是非声をかけていただき、食材の問い合わせには、確認して正確にお答え下さい。

◆炊き出しでは、個別の調理を認めてあげてください
大量調理の炊き出しでは食物アレルギーの人に個別対応は困難です。できれば患者分の食材を分けて、家族がセルフ調理することを認めてあげてください。また鶏卵・牛乳・小麦アレルギーがいる場合、炊き出しにこれらの食物を利用しない工夫を考えてみて下さい。

◆“アレルギー対応食”や“アレルギー用ミルク”
アレルギー対応食やアレルギー用ミルクの支援がある場合には、優先して利用できるように配慮してください。

◆菓子をあげる時にも注意してください
食物アレルギーのこどもの中には、自分が“食べられないもの”を理解していないこともあるので、こどもたちへ菓子などをあげる場合には、食物アレルギーの確認が必要です。

2).原因食物を食べると、様々なアレルギー症状がでてきます
※以下のような症状がでた時はすぐに受診を!

[強いアレルギー症状]
ひどいじんましんや強いかゆみ、声がかすれる、止まらない唆、ゼーゼー・ヒューヒュー、強い腹痛、なんども吐く、顔色が悪くぐったり、意識低下・消失などの場合には、直ちに医療機関を受診(可能なら救急車で)できるように配慮して下さい。


〇食物アレルギーのこどもたちへの配慮のお願い(自治体・避難所管理者の方々へ)

こどもの食物アレルギーは就学前で約5%おり、避難所や避難先にも必ずおります。非常時のために保護者が遠慮したり、周囲の無理解から苦労していたりする声を少なからず聞きます。行政・管理者側から積極的に食物アレルギー患者の把握と配慮、周囲の方々への疾患の理解を促進してください。また稀ですが原因食物を誤食するとショック状態になり、命に関わることもあります。非常時であればこそ、患者が安全で確実な食生活が送ることができ、誤食事故の予防と発症時への以下の対応の充実を何卒宜しくお願い致します。

1).食物アレルギー患者の把握と周囲の方々への疾患の理解を促進
◆行政・管理者側が患者を把握して、以下の配慮できるよう体制を整えください。また周囲の方々の疾患理解が乏しいことから、心無い言葉を浴びせられることもしばしばあります。たとえ貴重な支援食であっても、原因食物が含まれていれば患者は食べられませんので、周囲の方々への周知をお願いします。

◆保護者がいない状況で、周囲の方々やボランティアが菓子類などを与えないように注意喚起して下さい。患児に食物アレルギーがあり、何が食べられないのかを誰でもわかるように、児に目印をつけてもらうことも有効な予防策の一つです。

2).原因食物を食べないようにする配慮
◆非常時に患者や保護者は自分たちにアレルギーがあることを言い出せずに苦労していることがあります。配給や炊き出しをする側から、その都度「食物アレルギー患者さんはいませんか?」「アレルギーで食べられないものを教えてください。」などと積極的に声がけをしてください。

◆特に多品目の除去が必要な患者は、優先的に食べられるものを選ばせてください。

◆支援物質のなかに“アレルギー対応食・ミルク”がある場合は、食物アレルギー児には貴重なものなので、一般向けには配布せずに患者向けに配布してください。

◆容器包装された加工食品の食品表示で“鶏卵、乳、小麦、ソバ、ピーナツ (落花生)、エビ、カニ”に関してはごく少量で も含まれていれば必ず表示されます。それ以外の食物は少量しか含まれていないと、表示されない可能性があります。患者もしくは保護者からの食品表示に関する問い合わせには正確な情報を提供してあげてください。

◆食物アレルギーで多いのは“鶏卵・牛乳・小麦”です。炊き出しにおいてはそれら食材を使用しない調理をエ夫することを考えてください。また個別に調理できる状況にある保護者に対しては、患者分の食材をわけて、自分自身で調理することを認めてあげてください。

3).食物アレルギー症状出現時の迅速かつ適切な対応
食物アレルギー症状の多くは、原因食物を食べて直ぐ~30分以内に現れます。その症状は、軽症から重症まで様々で、重症度により対応が異なります。

[軽い症状]
部分的なじんましんやかゆみ、弱い腹痛、喧気、弱い唆や鼻水など
対応:経過観察、経ロ抗ヒスタミン薬があれば内服させます。直ぐに症状が改善することがほとんどです。中等症に進行するか注意深く観察します。

[やや強い症状]
全身のじんましんや強いかゆみ、明らかな腹痛、喧吐、強い唆、元気がなくなるなど
対応:速やかに医療機関を受診することが必要な状況です。

[強い症状]
強い腹痛、繰り返す喧吐・下痛、ぜん鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、明らかな活動性の低下(ぐったり)、意識低下・消失、失禁など
対応:一刻も早く医療機関を受診することが必要な状況です。患者に処方されているエピペンがあれば、注射します。

(参照元:日本小児アレルギー学会)


[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也