【熊本地震】災害時のこどものアレルギー疾患対応/アトピー性皮ふ炎のこども

2016/04/20

〇アトピー性皮ふ炎のこどもをお世話される方々へ

今までとは違う生活環境で、アトピー性皮ふ炎をよい状態に保つことは、とても難しいことだと思います。これまでと同じようにシャワーや入浴がなかなかできない状況で、肌の状態を少しでも悪くしないために、以下のような方法が考えられます。

◆シャワーや入浴ができない時は、熱すぎない程度のお湯でぬらしたタオルで全身の汗やほこりをやさしくぬぐったり、押しふきしてあげてください。全身をふいた後は肌はどんどん乾燥しますので、早めにぬり薬(ステロイド入りや保湿用)をつけましょう。
※市販のウエットティッシュやおしりふきを使うと、香料やアルコールなどの成分でかえって肌があれることがありますので、まず肌の一部で試してみてからお使いください。

◆シャワーや入浴ができない状態が続くと、一般的には肌の調子がわるくなります。そのため、普段からステロイド入りのぬり薬を使っている人は、いつもより強めのステロイドを使うことをお勧めします。普段は保湿用のぬり薬だけで十分な方も、早めにステロイド入りのぬり薬を使うことをお勧めします。手元にステロイド入りのぬり薬がない場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。一時的にステロイド入りのぬり薬を強くしたり始めたりしても、適切なスキンケアや治療ができていれば、元の薬に戻したりステロイドを中止することは可能です。

◆今まで使用していたステロイド入りのぬり薬が手元にない時は、同じくらいの強さや効果をもつ薬で代用しても大丈夫です。保湿用のぬり薬を市販のもので代用することも問題ありませんが、人によっては一部の製品が肌に合わないこともあります。初めて使う時には、肌の一部で試してみてからお使いください。

◆肌のお手入れが十分できないうえに様々なストレスや体調不良が加わって、かゆみが強くなることがあります。かゆがる部分を冷たいタオルなどで冷やすと、一時的に楽になることがあります(ただし、ぬれたタオルを長い時間直接肌に当てないように、また小さいお子さんでは体が冷えないように注意してください)。皮ふ炎がひどい場合には、ステロイド入りのぬり薬をしっかり使いましょう。また、遊びなどに集中させて気をそらしてあげることも、時には効果があります。

◆シャワーや入浴ができる機会があれば、病状を説明して優先して利用できるか係りの方に尋ねてみましょう。できれば毎日、石けんを使って体を洗い、よく流すとよいでしょう。しかし、石けんを使わないシャワー浴だけでも効果はあります。特に、汗をかいたら早めに洗い流すとより効果的です。


〇アトピー性皮ふ炎のこどもたちへの配慮のお願い(周囲の方々へ)

アトピー性皮ふ炎はこどもに多いアレルギーの病気のひとつで、さまざまな原因によってかゆみを伴ったしっしんが皮ふにできます。避難所など今までと違う環境で生活していると皮ふの状態が悪化してかゆみが強くなり、そのために、周りの人たちに迷惑をかけているのではないかと家族の方は大変気を遣っていると思います。一緒に過ごされている皆様には、アトピー性皮ふ炎について以下のことをご理解のうえ、ご配慮いただけますようお願い致します。

1).毎日のシャワーや入浴も治療の一部です
高血圧の方が毎日薬を飲んだり、脚の不自由な方がリハビリを続けたりするのと同じように、アトピー性皮ふ炎のこどもにとってシャワーや入浴で皮ふを清潔に保つことは治療の上でとても大切なことです。これは決してぜいたくで行っているわけではないということをご理解ください。

2).アトピー性皮ふ炎は感染症ではありません
重症のアトピー性皮ふ炎であっても、決して他の人にうつることはありません。ですから、抱っこしたり遊んだり、一緒にお風呂に入ったりしても、お互いの心が通うことはあってもアトピー性皮ふ炎やアレルギー体質がうつることは全くありません。

3).悪化すると大変かゆくなります
シャワーや入浴ができなかったり、十分に薬がぬれなかったりすると、しっしんが悪くなり昼夜を問わずかゆみがひどくなり、ずっと体をかいていたり、夜泣きがひどくなることがあります。周りで生活されている方々にはご迷惑かもしれませんが、アトピー性皮ふ炎という病気によるものですので、ご理解のほどお願い致します。


〇アトピー性皮ふ炎のこどもたちへの配慮のお願い(自治体・避難所管理者の方々へ)

アトピー性皮ふ炎の治療には、毎日のスキンケアが欠かせません。できればこれまでと同じようにシャワーや入浴とその後の外用薬をつづけていただくことが理想です。痒みがひどくて眠れなかったり、皮ふからじくじくした体液がでたり、出血するような重症のこどもたちは入院治療ができる病院への手配をご考慮下さいますようお願い致します。

◆毎日のシャワーや入浴によって皮ふを清潔に保つことは、アトピー性皮ふ炎の治療ではとても大切です。症状の悪化原因である汗、皮ふの汚れ、雑菌を取り除くためには最低1日1回石けんを使って洗い流すことが望ましいです。ただし肌が敏感なアトピー性皮ふ炎では石けんの成分によってかぶれることがありますので、なるべく防腐剤や香料などの無添加のもの(安価なもので構いません)をお使い下さるようお願い致します。

◆石けんが使えない場合は、シャワー浴だけでもご配慮頂けると、汗による悪化を緩和する効果があります。シャワー浴をする設備もない場合は、すこし効果は劣りますが、お湯か水でぬらしたタオルで皮ふを清拭されるとよいでしょう。市販のウエットティッシュやおしりふきはアルコールや防腐剤の成分によって症状が悪化するものもあるのでご注意下さい。

◆アトピー性皮ふ炎はその外見から、心ない人たちによって偏見を持たれたり、一緒に過ごすことを嫌がられてしまうことがあります。周りがそう思っていなくても、家族は周囲に対して非常に気をつかっています。常時は無理であっても、薬を塗ったりする時間だけでも周囲の目から触れない所でできるようにご配慮頂けると幸いです。

◆ひどく皮ふをかきむしって眠れない状態が続いたり、皮ふがじくじくして出血しているような場合は入院治療が望ましいです。アトピー性皮ふ炎児の入院治療を 受け入れてもらえる病院への手配をご考慮頂けると幸いです。

(参照元:日本小児アレルギー学会)


[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也