【熊本地震】災害時のこどものアレルギー疾患対応/ぜんそくの子ども

2016/04/21

〇ぜんそくの子どもをお世話される方々へ

今までとは違う環境で生活していると、せきが出やすくなったり、ぜんそく発作が起こりやすくなることがあります。このような悪化を防ぐために、以下のような方法が考えられます。

1).発作の引き金になるものを避ける
◆寝具 (毛布や布団など) にはぜんそくの原因となるチリダニがいることが多いので、寝具を拡げたりたたんだりする時には、できるだけホコリを吸い込まないように気をつけましょう。また、顔があたるところにきれいなタオルをあてておけば、寝具からのホコリを吸い込むことを少し防げるかもしれません。できれば、天気の良い日に太陽にあてて干すと、寝具のなかのダニを少なくすることができます。

◆たばこ、たき火、岐取り線香などの煙を、なるべく吸い込まないようにしてください。 がれきからは、いろいろな有害な粒子が飛んできて発作をおこすことがありますから、 近くに行く時は必ずマスクをつけましょう。

◆動物に対してもアレルギーのこどもがいますので、動物に近づくと目がかゆくなったり、鼻水が出やすくなるようなら、ずっと一緒にいることは避けましよう。

2).発作の予防薬を毎日続ける
※以下のような場合は医師に必ず相談しましょう
◆普段から発作の予防薬を使っている人は、しっかり毎日続けてください。それでも、夜中に何度もせき込んだり、発作をくり返すようになったら、薬の量を増やしたり、変更したりする必要があるかもしれません。

◆電源が近くにないなどの理由から電動のネブライザーが使えない人には、スペーサーという補助具を使うことで電源不要のエアロゾールタイプの吸入薬に変更することが可能です。また、スペーサーが手に入らない時には、紙コップの底に穴を開けるとスペーサーの替わりになります。

◆普段は毎日薬を使うほどでもなかった方でも、夜中に何度もせき込んだり、発作が出るようになったら、発作の予防薬を毎日続ける方がよいと思われます。

◆発作が起きた時に使う薬(吸入や内服) がなければ、処方をしてもらってください。

◆発作が起きたら、まず水分を飲ませ、息をゆっくり深くするように声をかけてください。発作時の薬を使い、もたれかかる姿勢で休ませてください。それでも、苦しくて何度も目を覚ます、座り込んで苦しそうにしている、などの症状がある時は救急の受診が必要です。


〇ぜんそくの子どもたちへの配慮のお願い(周囲の方々へ)

ぜんそく(気管支ぜん息)は、アレルギーの病気のひとつで、さまざまな原因によってせきが出やすくなったり、ぜんそく発作(胸からゼーゼー、ヒューヒューと音がする、息が苦しくなるなど)を起こしたりします。避難所など今までと違う環境で生活していると、ぜんそくの状態が悪化しやすくなりますが、気をつけていれば毎日元気に生活できますので、一緒に過ごされている皆様には、ぜんそくについて以下のことをご理解のうえ、ご配慮ください。

1).ほこり、煙、強いにおいなどが発作の引き金
◆寝具を拡げたりたたんだりする時のホコリや、たばこ、たき火などから出る煙を吸い込むと発作になることがありますので、ぜんそくのこどもたちの近くでは気をつけてあげてください。また、がれきからはいろいろな有害な粒子が飛んできて発作を起こすことがありますので、ぜんそくのこどもが近くにいる場合にはマスクをつけさせてください。

◆動物に対してもアレルギーのこどもがいますので、その場合はご配慮ください。

2).発作の予防薬をきちんと使うことが大切です
◆高血圧や糖尿病の人たちと同じように、元気に生活するためには発作がなくても予防薬を毎日使うことが大切です。ぜんそくでよく使われる吸入薬のなかにはネブライザーという電動の器械を使って吸入するものがあります。このような場合には、電源を優先的に使えるようにご配慮下さい。なお、1回の吸入には10ー15分ほどかかります。

3).息が苦しそうな時は早めに受診
◆強い発作が起こると、呼吸がしづらくなります。苦しくて何度も目を覚ます、座り込んで苦しそうにしている、などの症状がある時は救急の受診が必要ですので、夜間であっても早めに医療機関を受診できるようにご配慮下さい。

◆ぜんそくでは、発作までにはならなくても夜に唆き込んで急に泣き出したりすることが時々ありますが、これはぜんそくという病気のためですので、ご理解のほどお願い申し上げます。


〇ぜんそくの子どもたちへの配慮のお願い(自治体・避難所管理者の方々へ)

ぜんそくの患者さん(こどももおとなも)が発作を起こさないようにするためには、アレルゲン(ダニなどアレルギー原因の物質)やがれきなどからでる粉塵を吸い込むことを避けること、発作を予防する長期管理薬をきちんと使用することが重要です。強い発作は生命に関わりますので、救急の対応をお願いします。

◆毛布や布団のほこりにはぜんそくの原因となるチリダニが含まれていますので、これを避けるよう、ほこりを立てない、可能ならば快晴の日に外で干す、なるべく新しいものを支給する、などの配慮をお願いします。支援物資の中に、ダニ防止シーツなどがあるかもしれませんが、ぜんそくの方に優先的に配布をお願いします。

◆がれきを撤去する際に発生する粉塵や、不要になったものを焼却する際に発生する煙などで発作が誘発される可能性がありますので、復旧活動にあたっては粉塵 や煙への対策をお願いします。

◆治療の基本は、長期管理薬といわれる吸入ステロイドやロイコトリエン描抗薬などを毎日きちんと服用することです。避難所の環境のために、通常より多くの量や種類の薬が必要なこともありますが、一時的にはやむを得ません。発作を起こさないように十分コントロールすることがたいせつです。必要な薬が入手できるようにご配慮をお願いします。

◆ぜんそく発作が起こった時は、気管支拡張薬と言われる薬をすぐに吸入または内
服します。これも患者様が手元に置いておけるようにお願いします。顔色が悪い、唇が紫色、仰向けに眠ることができず、座り込んで苦しそうにしている、などの様子があれば、生命に関わる重症発作ですから、救急受診のご手配をお願いします。

◆ぜんそく予防の吸入ステロイドや発作治療薬の気管支拡張薬を、電動のネブライザーという器械をつかって吸入しなければならないことがあります。避難所の電源は貴重ですが、ぜんそく児にとっては命に関わることですので、吸入時(定期的に1日1〜2回、発作時には随時)の優先的電源使用にご理解をお願いします。

(参照元:日本小児アレルギー学会)


[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也