2018年度福井県ベスト育児制度賞

2018年度福井県ベスト育児制度賞

受賞団体

hair&accessories MOK

受賞制度

障がいのあるお子さんのヘアカット
療育手帳及び障がい者手帳を持っている小学6年生までが対象。髪を切る行為を受け入れていけるよう無理な強要はせず、ご本人に期待して取り組んでいます。

障がいのあるお子さんのヘアカット

【コメント】
今回このような賞にノミネートして頂き光栄に思います。それと同時に、育児に関わる多方面の活動を発掘し発信していらっしゃる団体の存在を知ることができ、感謝しています。
この活動を2018年1月より始め、約1年半が経過しました。きっかけは自身の息子がダウン症ということもあり、私たちにとっては何でもない日常の中で気付かされた出来事が、この活動に結び付いたかと思います。
当初は「障がいを持つお子さんの無料カット」として、話題となり、新聞にもとりあげられましたが、いつしか"無料"という部分ばかりに注目が集まってしまい、「カットが出来なくて困っている」というお子様を対象にしていた趣旨とズレが生じたため、現在の形になっています。
お問い合わせの際、「お金を払いますのでチャレンジさせてください!」といった事を伝えて来られる親御さんもいらっしゃいます。 カットは1日で仕上げて当たり前…。そう思うのが"当たり前"なのかもしれません。そんな中、ご本人と親御さんのチャレンジとして達成に持っていけるように、方法を話し合って進めていく美容室があっても良いかな…と。可能な限り受け皿を広くしたいと考えています。 当店では、幾度にも日を分けて来店して下さり、5回目にして漸く1つのスタイルを仕上げる事が出来たお子様もいらっしゃいます。その間、来店時期が開く程髪は伸びますし、スタイルも気持ちも振り出しに戻ってしまうこともあります。しかし、今では終始ご本人は誰に促される訳でもなく、嫌がることなく1人で座って仕上がります。当時、セット椅子に座ることのみに1時間要しました。その日はそこまで。その後、タオルやクロスを掛けられるようになるまでに4回ご来店頂きました。感動は5回目の来店日に起こりました。感極まるものがありました。時間調整をしながら何度も当店に辛抱強く足を運んでくださった親御さんの忍耐力と徐々に私への警戒心を外してくれチャレンジしてくれたご本人のおかげだと思っています。
障がいを持った子どもさんのカットを通して、ご両親やご兄弟との関わり方も自身には重要なヒントになります。まだまだ心も身体も成長していくお子様の将来を思うほど、幼い頃から髪を切ることにストレスを与えることは間違いなのではないかと考えています。美容室は本来リラックス出来る場所であり、沢山の大人はその事を感じ取っているはずです。
初対面の私に触られること、接近されること、当店にご来店される以前のカットのやり方に恐怖心を覚えている子どもさんも少なくなく、そういった警戒心を払うにはどうしても慎重なステップが不可欠になります。
そんなに急いでどうする?嫌がるお子様を抑えつけたり怒鳴ったり。本人にしたら、到底リラックスのスイッチは入りません。「怖くないよ」「痛くないよ」と声掛けされる親御さんも見受けられます。自身この活動をしていて"これらの発言"が逆効果になると感じています。
当店では子ども向けのDVDやおもちゃといった物はご用意していません。カットしたら何か買って貰える、何処か連れて行って貰える。そういった約束を親子で交わしてご来店されるのはお任せしていますが、成長と共に誘惑でつったり目的を逸らすやり方から脱していく考えを持って頂きたいと考えています。ご褒美や力任せのやり方をこの先もずっと続けていくのか?それならば、やり方も変わらないし当店でなくても良いのでは?とも思わされます。
本当に髪が切れるようになること…本人がカットされる行為を受け入れて初めてそう言えるのではないかと思っています。
この活動を通して、色々な方々との出会いもあります。
私は一美容師としてこの活動を行っています。なので、専門的資格等も経験も事業所間の繋がりに関しては素人です。仕事として関わっている人と親が見ている世界・見えている世界には複雑な違いがある事も体験から学びました。
"障がいを持った子ども・大人の髪を切ることは容易なことではなく、紙面上の記録や症例では辿りつけない様々な課題がある"私はそう捉えて活動をしています。もしかしたら、教育、医療、福祉の現場に関わる立場であっても、この現状に気付いていない方もいるかと思います。気付くのは特定の立場の人に限ったことではないという現実と、繋げていくためには本質的な活動を知ってもらわないと意味がないと確信しました。当初は定休日で実施していましたが、現在は通常営業時間内でご予約を受け付けています。平日土日祝日問わず、本当に困っておられる方々に対応していけるよう、再度内容を見直しました。お仕上げまでカット出来た場合は通常料金、もし出来なかった場合はお時間代として500円頂いています。勿論、ご本人と向き合う時間は従来と変わらずたっぷり1時間ご用意させていただいています。
カットの対象はお子様ですが、準備をして当店に連れて来てくださるのは親御さんです。この活動はご家族の協力と忍耐力無しには成立しない、とも言い切れます。
この先、我が子の成長を軸に新しく発見する事も増えます。そこからアイデアに繋げ、この活動をより必要としているご家族に向けて発信していけるよう、自身も励んで行く次第です。

【選考理由】
療育手帳や障害者手帳を持つ子どもたちのヘアカットはなかなか難しく、親も遠慮しがちです。保護者の気持ちがわかった美容師さんがいらっしゃることは何よりの安心感につながっていると思います。これからも頑張っていただきたいです。