大学無償化(高等教育の修学支援新制度)
ひと昔前まで、大学などへ子どもを通わせる資金が足りない場合は貸与型の奨学金という選択肢しかありませんでした。貸与型とは貸し付けのことで、返さなくてはならない奨学金です。しかし現在では、返さなくてもよい給付型の奨学金、いわゆる大学無償化制度(修学支援新制度)があります。
しかし、大学無償化制度は、年々変わっていくので制度がツギハギとなり、複雑で分かりにくいという声も多く聞きます。でもこのページにたどり着いたあなたはもう大丈夫。大学無償化の全てが分かるように丁寧に説明していきます。(2025.03.27更新)
大学無償化(高等教育の修学支援新制度)とは
大学無償化は、正式名称は「高等教育の修学支援新制度」といい、大きな費用が掛かる大学や短大、高専や専門学校への進学を費用が原因で諦めて欲しくないという方針から生まれ、年々対象となる世帯が拡大傾向にある制度です。
世帯の所得と多子(3人以上子どもがいる)である2つの基準により、低所得世帯の大学無償化・中所得世帯の大学無償化・多子世帯の大学無償化の3つの大学無償化が存在します。
それでは、制度の基本的な構成から見ていきましょう。
大学無償化は2つの支援の組み合わせ
大学無償化は、「返さなくてもいい給付型の奨学金」と、「入学金と授業料の減額」の2つがセットになった制度です。これをまず覚えておいてくださいね。
大学無償化の条件
大学無償化を受けられる条件は、世帯年収が大きく関係してきます。こちらの大学無償化を受けられる世帯収入の区分表を作成しましたのでご覧ください。
この表の見方を説明します。例として、年収が360万円の世帯があったとします。この世帯は上の表に基づくと「給付型奨学金」の1/3と、「入学金・授業料の減額」の1/3の支援を受けることができます。具体的な金額は、公立か私立かや大学か専門学校かなどによって変わってきます。こちらは後ほど別の表で説明しますので、今の時点では世帯年収を見てご自身が「低所得世帯の大学無償化」なのか、「中所得世帯の大学無償化」なのか、「多子世帯の大学無償化」なのか確認してください。
ちなみに、所得が800万円で子どもが2人(多子世帯ではない)世帯は、残念ながら大学無償化の制度は受けることができません。しかし、冒頭でもお伝えしましたが年々拡充傾向にありますので、毎年このページをチェックするかもしくは、イクハクSNS(Youtube・Tiktok・公式LINE)をフォローされることをおすすめします。
※年収目安はあくまでも一例です。兄弟姉妹の数や年齢等の世帯構成などで異なります。
低所得世帯の条件
世帯年収が約380万円以下の世帯が対象です。
その世帯の中でも世帯年収が、約270万円以下の世帯・約300万円以下の世帯・380万円以下の世帯という3つの区分があります。
※年収目安はあくまでも一例です。兄弟姉妹の数や年齢等の世帯構成などで異なります。
中所得世帯の条件
世帯年収が約600万円以下の世帯が対象です。
ただし、多子世帯であること、また多子世帯でなくても私立の理工農学科の学生であることが条件となります。
※年収目安はあくまでも一例です。兄弟姉妹の数や年齢等の世帯構成などで異なります。
多子世帯の条件
子ども3人以上を扶養する多子世帯が対象です。所得制限はありません。
3人以上を同時に扶養(経済的に支援)している間は、第1子から支援対象となります
子どもが3人の場合、第1子が就職するなど扶養から外れた場合は、扶養している子どもは2子という扱いになり多子世帯という条件から外れるため、支援対象外となります。
大学無償化でいくら支援してくれるの?
ここまでくると、具体的な支援額が気になりますよね。
「返さなくてもいい給付型の奨学金」と「入学金と授業料の減額」の2つがセットの制度ですので、それぞれの表をご用意しました。記載しているのは満額の金額です。この金額に対して、世帯所得により2/3、1/3、1/4となります。先ほど見ていただいた大学無償化を受けられる世帯収入の区分表と合わせてご覧くださいね。
給付型奨学金の支給月額
給付型奨学金の満額(100%)を記した表です。月額で記載しています。
入学金・授業料の免除・減額の年額
こちらはもう1つの入学金・授業料の免除・減額の支援の満額(100%)を記した表です。年額で記載しています。
いくら支給されるか例を挙げますと、
・年収350万円の世帯
・私立の大学
・自宅外通学
・入学して1年目
の場合、支援金額は75,800円✕12ヶ月+26万円+70万円✕1/3=303,228.96となり、大学1年目は年間約30万円の支援となります。
ご自身の世帯が大学無償化制度でどのくらいの支援が受けられるか、これで分かりましたね。
では次に、受けるにあたり何をするべきかなどの詳細を把握していきましょう。
3つの大学無償化の手続き方法などの詳細
ここでは低所得世帯、中間所得世帯、多子世帯それぞれの大学無償化を受けるにあたって、手続き方法や、スケジュール的な流れなど具体的な内容を知っておきましょう。
このページでまとめて紹介したかったのですが、情報量が多いのでそれぞれ別ページを設けました。リンク先は「大阪市中央区の制度」となっていますが、全国共通の大学無償化制度ですのでスルーしてください。
低所得世帯の大学無償化
低所得世帯の大学無償化は、所得が低い低所得世帯を対象に、大学・短大・高専・専門学校の授業料や入学金を国が定める一定額まで無償にする制度です。 低所得の中でも3つの区分があり受けられる支援額に差があります。
中所得世帯の大学無償化
世帯年収約600万円(目安)までの世帯のうち、子ども3人以上を扶養する多子世帯や、比較的授業料の高い、私立理工農系の学部に通う学生に対して、「給付型奨学金」と「授業料・入学金の支援」をする制度です。
2024年に制度が拡充され、所得の上限額が引き上げられました。
多子世帯の大学無償化
多子世帯の大学無償化は、扶養する子どもが3人以上いる世帯を対象に、大学・短大・高専・専門学校の授業料や入学金を国が定める一定額まで無償にする制度です。
2025年(令和7年)4月から開始され、世帯の所得制限がないのが特徴です。扶養する子どもが3人以上という条件ですが、第1子が社会人になったから受けられないわけではありません。どの時点での扶養かなど詳細を詳しく説明していますのでご参照ください。
大学無償化の最新情報
大学無償化制度は年々拡充されています。「上の子どもの時と違う!」なんてことも珍しくありません。年に1度は最新の情報を確認するようにしましょう。
2025年4月1日:多子世帯の大学無償化がスタート
多子世帯の大学無償化が開始されました。申し込みの手続きは入学後、各学校の窓口にて行われます。今までになかった制度ですので、各所混乱が生じると思われますが正しい情報を取得するよう心がけましょう。
大学無償化の対象となる4つの学校
対象校は大学・短大・高等専門学校・専門学校で、国公立・私立とも対象となります。
具体的な大学無償化対象校の調べ方
全国で3100校が対象となっていますが、中には対象でない学校もあります。予め、文部科学省の支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧で調べてみてください。
大学無償化と奨学金の違い
まず、奨学金とは、進学したくても経済的な理由で大学などの学校に通うことが難しい学生を援助するため、学費や生活費をサポートする制度のことです。そして奨学金には、「貸与型」の奨学金と「給付型」の奨学金があります。「貸与型」の奨学金は返済が必要となりますが、「給付型」の奨学金は返済の必要がない奨学金となります。一方、大学無償化は「給付型奨学金」と「入学金と授業料を免除・減額」にするという返さなくてよい制度のことです。
知らない方も多いのですが、現在貸与型や給付型の奨学金を受けている学生も、大学無償化の条件に合えば制度を受けられる可能性があります。学校の窓口に相談してみてください。
大学無償化で入学した後の注意点
大学無償化制度で入学したあとも気を付けておかないといけない点があります。入学前に確認しておきましょう。
学業成績・出席日数による制度の取り消し
留年や出席率が低い場合などは対象から外れる可能性があるので注意してください。2025年4月から拡大されたことで、より厳しくなるようです。折角の大学無償化制度です。くれぐれも取り消しということにならないように。
多子世帯の大学無償化の場合は入学後に申請が必要
2025年現在、多子世帯の大学無償化の制度は入学後に学校窓口で申請することになっています。その後、学校を通じて、日本学生支援機構へ申し込みをする手順となります。
大学無償化の便利なツール
イクハクでは大学無償化に関する様々な便利ツールを公開しています。全て無料で何度も利用できます。
低所得世帯の大学無償化はいくら?計算ツール
低所得世帯の条件を入力するすると、大学無償化制度でいくら支援を受けられるのか目安が分かります。
・低所得世帯の大学無償化はいくら?計算ツール(近日公開)
多子世帯の大学無償化はいくら?計算ツール
多子世帯の条件を入力するすると、大学無償化制度でいくら支援を受けられるのか目安が分かります。
・多子世帯の大学無償化はいくら?計算ツール(近日公開)
多子世帯の大学無償化対象者判定ツール
ある日の時点の子どもの年齢を入力すると、だれが多子世帯の大学無償化の支援が受けられるのかが分かります。
・多子世帯の大学無償化対象者判定ツール(近日公開)
大学無償化制度のこれまでの経緯
大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)は年々拡充傾向にあります。これまでの遷移をまとめました。
2020年:授業料の減免・給付型奨学金開始
ひとり親などの収入が低い世帯に対しての支援が開始されました。対象学生の授業料を低くし、返さなくてもいい奨学金制度(給付型奨学金制度)が設けられました。
2024年:高等教育の修学支援新制度が多子と理工農学部系の学生向けに拡充
年収が600万以下の世帯で子どもが3人以上いる世帯や、理工農学部系の学生に対して支援が拡充されました。このころから大学無償化と呼称されるようになりました。
2025年:大学無償化(高等教育の修学支援新制度)が多子世帯に拡充
多子世帯への大学無償化が4月にスタート。600万円の所得制限が撤廃となり、多子世帯は全て対象となりました。
大学無償化のよくある質問
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既に在学中の場合でも大学無償化制度は受けられますか?
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はい。対象になります。
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既に貸与型(無利子・有利子)の奨学金を受給していますが、大学無償化制度は受けられますか?
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はい。受けられる可能性がありますので、学校窓口に相談してみてください。
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低所得世帯であり、多子世帯の場合はどうなりますか?
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両方に該当します。給付型奨学金は収入に応じて支給され、入学金・授業料が満額支給になります。
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全ての大学で無償化になりますか?
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「無償化」にならない大学もあります。進学する大学や短大、高等専門学校が、直近3年間で収容定員が8割未満の場合は対象外となる可能性があります。対象校となっているかどうかは、支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧でご確認ください。
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年収700万円で2人の子どもを持つ家庭は大学無償化の対象ではないですか?
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大学無償化の対象ではありません。3つの大学無償化のどれにも属しませんので、大学無償化の対象ではありません。
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高等学校の就学支援金制度とはどう違いますか?
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名称はとても似ていますが、高等学校の就学支援金制度は高校無償化制度のことで、大学無償化制度である高等教育の修学支援新制度とは全く異なります。冒頭の「高等学校」は高校のこと、「高等教育」は高い教育ということで大学・短大・高専・専門学校を指します。この文字の違いで判断するとよいでしょう。
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Written by 安木 麻貴
(一社)日本子育て制度機構 /
育児制度アドバイザー
誰も教えてくれない子育て支援制度を分かりやすく子育て世帯に伝えています。高校・大学での講話やyoutubeでも。